実家が物で溢れかえり、散らかり放題なのを見て、「なぜ親は平気なんだろう?」「これのどこが普通なの?」と感じたことはありませんか? あなたにとっては明らかな「問題」でも、親御さんにとってはそうではない。この意識のギャップこそが、実家片付けにおける最も大きな壁かもしれません。
今回は、この「なぜ親は『汚い』と思わないのか?」という疑問に焦点を当て、その背景にある理由と、私たちにできる効果的なアプローチについて考えていきましょう。
「汚い」の基準が違う? 長年の習慣と思考
まず、根本的な問題として、親世代と私たちとでは「きれい」や「汚い」の基準が違うことがあります。
- 物の価値観の違い: 戦後の「もったいない」精神が強く根付いている世代にとって、まだ使える物を捨てることへの抵抗は非常に強いものです。それは「汚い」という感覚よりも、「使える物を粗末にしてはいけない」という価値観が優先されるためかもしれません。
- 慣れ親しんだ環境: 長年その環境で生活していると、それが「当たり前」になります。散らかっている状態が日常になってしまうと、そこに問題意識を持つこと自体が難しくなります。視覚的に物がたくさんあっても、どこに何があるか本人には分かっている、というケースも少なくありません。
- 身体的・精神的な要因: 年齢を重ねると、体力的な衰えや、認知機能の変化などから、片付けが思うようにできなくなることもあります。体が動かない、気力が湧かないといった状況では、きれいな状態を維持するどころか、現状を維持するだけでも大変な場合があります。
問題意識を持ってもらうための「優しい」アプローチ
では、この意識のギャップをどう埋めていけばいいのでしょうか? 私が実践し、少しでも効果を感じたのは、相手を責めず、あくまで「優しく」「少しずつ」働きかけることです。
- 健康と安全を最優先に伝える: 「部屋が汚い」と直接的に指摘するのではなく、「滑って転んだら危ないから、ここだけは道を空けよう」「ホコリが多いと、咳が出やすくなるから心配だよ」など、親の健康や安全への影響を具体的に伝えます。これは、親が自分事として捉えやすいきっかけになることがあります。
- 「快適さ」を体験してもらう: 無理に物を捨てさせるのではなく、例えば「このテーブルの上だけ片付いたら、もっと広々とご飯が食べられるね」「このソファ周りがきれいになったら、ゆっくり座ってテレビが見られるよ」など、片付いた後の「快適な未来」をイメージしてもらう働きかけをします。
- 第三者の意見を活用する: 親が自分の言葉に耳を傾けてくれない場合でも、地域包括支援センターの職員や、訪問看護師など、第三者が「これは安全上問題がありますね」「もしもの時に救急隊が入れません」といった客観的な視点で話してくれると、親も受け入れやすくなることがあります。直接的な言葉より、専門家の意見の方が響く場合もあります。
あなた自身が疲弊しないために
親に問題意識を持ってもらうことは、時間と根気がいる、そして時には報われないと感じるプロセスかもしれません。だからこそ、最も大切なのは、あなた自身がこの問題で心身を疲弊させないことです。
自分の管理できる範囲を明確にし、そこに集中することで、ストレスを軽減できるという話を以前にもしました。親の意識を変えることだけが、片付けの解決策ではありません。あなたが安心して過ごせる空間を確保することも、非常に重要な「片付け」なのです。
「なぜ?」という疑問は尽きませんが、その疑問に囚われすぎず、あなたにとって何が最善かを考えながら、この課題に向き合っていきましょう。
コメント