情報過多な現代社会で、私たちの脳は常にフル稼働しています。SNS、ニュース、仕事の連絡……気づけば四六時中、何らかの情報を処理し、考え事をしているのではないでしょうか。
でも、ちょっと待ってください。そんな状態が続くと、脳は疲弊し、心身のバランスも崩れてしまいかねません。そこで今回ご紹介したいのが、私たちの脳に備わる素晴らしい「休憩スイッチ」こと、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)です。
「ぼーっとする時間」が、なぜ脳に必要なのか?
私たちはついつい「何もしない時間=無駄な時間」と考えがちです。しかし、実はその「ぼーっとする時間」こそ、脳が効率よく活動するために必要不可欠な時間なのです。
DMNは、私たちが意識的に何か課題に取り組んでいない時、つまり「ぼーっとしている」時に自動的に活発になる脳の活動ネットワークです。パソコンがバックグラウンドで動作を続けている状態に似ているかもしれません。
このDMNが活性化している時に、脳はこんな重要な働きをしています。
- 記憶の整理と定着: 日中に得た膨大な情報や記憶を整理し、長期記憶としてしっかり定着させます。
- 脳の疲労回復: 意識的な情報処理から解放され、脳はゆっくりと休息できます。これにより、疲労が軽減され、次の活動への準備が整います。
- 創造性やひらめきの促進: 脳が無意識的に情報と情報を結びつけることで、新しいアイデアが生まれたり、問題解決のヒントが突然ひらめいたりすることがあります。シャワー中に良いアイデアが浮かぶ「シャワー効果」もDMNの働きと関連が深いと言われています。
- 内省と自己認識の深化: 過去を振り返ったり、未来を想像したりする時間もDMNの活動と関連しており、自己理解を深めることにつながります。
DMNのバランスが崩れると、心身に影響が?
DMNは非常に重要な働きを担っていますが、その活動が過剰になったり、逆にうまく働かなかったりすると、私たちの心身に悪影響を及ぼすことがあります。
たとえば、DMNが常に過活動になっていると、脳が休まることなく、慢性的な脳疲労につながります。また、ネガティブな考えが頭から離れない「反芻思考」や、うつ病、不安障害など、精神的な不調との関連も指摘されています。
つまり、DMNを適切に「オン・オフ」切り替えることが、脳の健康、ひいては心身の健康を保つ上で非常に大切なのです。
今すぐできる!DMNを「休憩スイッチ」として使いこなす方法
では、どのようにDMNを意識的に活用し、心身を整えていけば良いのでしょうか? 大切なのは、「意図的にぼーっとする時間」を作ることです。
- デジタルデトックスの時間を設ける:
- スマートフォン、タブレット、PC、テレビなど、常に情報を与え続けるデバイスから意識的に離れる時間を作りましょう。SNSやニュースを見るのをやめ、デジタルから一時的に離れることで、脳は外部からの情報処理から解放されます。
- 散歩や入浴など、単純で心地よい活動を取り入れる:
- 目的もなく公園を散歩する、湯船にゆったり浸かる、皿洗いをする、洗濯物をたたむなど、あまり集中力を必要としない単純な作業は、DMNが活性化しやすい環境です。心が落ち着き、ふと良いアイデアが浮かぶこともあります。
- 短時間の「空白の時間」を作る:
- 仕事の合間や、家事の合間、通勤電車の中など、たった5分から15分でも構いません。何もせず、ただ目を閉じて呼吸に意識を向ける、窓の外を眺めるなど、強制的に「ぼーっとする」時間を作ってみましょう。
- マインドフルネス瞑想を試す:
- マインドフルネスは、DMNの過活動を抑制し、脳を適切な状態に保つ効果があると言われています。呼吸や体の感覚に意識を集中することで、思考の渦から一時的に離れることができます。
まとめ
忙しい現代人にとって、「ぼーっとする時間」は決して無駄ではありません。むしろ、脳を休ませ、情報を整理し、創造性を育むための、とても大切な時間なのです。
脳に備わった「休憩スイッチ」DMNを意識的に活用し、心身の健康を整えていきましょう。今日からあなたも、少しだけ「何もしない時間」を意識的に作ってみませんか?
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